製薬会社・医療機器メーカーの中には、患者さんに向けて疾患啓発の取り組みを進めようとしている企業もあるのではないでしょうか?
しかし、いざ本格的にインターネット上で患者さん向けの疾患啓発を行うとなると、発信する情報についてどんな点に気をつけるべきなのか、心配になることもあるでしょう。
そこで本記事では患者さんを対象とした疾患啓発の際に注意すべきことについて解説します。
目次
厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」
疾患啓発を行うにあたって重要となるのが、国や業界関連団体が定めているガイドラインです。そのひとつが、厚生労働省による「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」。医療用医薬品の適正な情報提供のために策定されたもので、一般人を対象とした疾患啓発も販売情報提供活動に含まれる※1とされています。その中から疾患啓発の際に重要となるポイントをご紹介いたします。
「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の「第1 基本的考え方 3 販売情報提供活動の原則」の中で、不適正使用又は誤使用を誘発しない
※2ことを目的として、以下のように定められています。
一般人向けの疾患啓発において、医療用医薬品による治療(診断及び予防を含む。以下同じ。)のみを推奨するなど、医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること。
- 出典:厚生労働省(2018年)「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」p.4(最終閲覧日:2024年2月28日)
そのため、疾患啓発の記事を読んだ患者さんが「医療用医薬品による治療だけが唯一の治療手段だ」と誤認しかねない内容にならないように、コンテンツづくりを進めていく必要があります。
日本製薬工業協会の「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」とは?
また「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の「第2 医薬品製造販売業者等の責務販売情報提供活動の資材等の適切性の確保 3 販売情報提供活動の資材等の適切性の確保」の項目には、
販売情報提供活動の資材等は、関係法令や本ガイドラインを遵守して作成されなければならず、最新の知見等を得たときは、適宜、更新・修正されること。なお、国際機関や関係業界団体が作成するガイドライン等も遵守して作成されるよう努めること。
- 出典:厚生労働省(2018年)「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」p.5(最終閲覧日:2024年2月28日)
と書かれています。
例えば、関係業界団体が作成するガイドラインのひとつに日本製薬工業協会(製薬協)による「製薬協コード・オブ・プラクティス」があります。この中には「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」が掲載されています。この指針から、疾患啓発の際に重要となるポイントを抜粋しました。
項目 | 日本製薬工業協会 ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針 |
内容(抜粋) |
---|---|---|
コンテンツ | 3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ |
特定の医薬品の広告と解釈されないよう、内容は疾患の説明を原則とすること。疾患に対する対処法を記載する必要がある場合は、通常想定される対処法について薬物治療だけでなく、安静、運動療法、栄養療法、外科的治療等、通常想定される対処法について公平に記載し、特定の医薬品に誘導するような記載はしないこと |
コンテンツ | 3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ |
病気の診断は、症状だけで決まるものではなく、検査等を含めて医師が総合的に判断することから、その症状等が確実に病気であるような印象を与える表現はしないこと |
チェックリスト | 3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ |
セルフチェックリストを作成する場合は、チェック結果で疾患を断定するような表現を用いないこと。疾患の特定には医師への相談を促す内容を盛り込むこととする |
コンテンツ | 3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ |
疾病を具体的に説明する場合は、医療関係者の監修を付けることが望ましい |
病院検索サイト | 3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ |
疾病に関連する病院検索サイトについては、自社製品の納入先のみの掲載はしないこと。ただし、診断・治療ができる医療機関が限られるなど自社製品の処方誘引とならない場合はこの限りではない |
サイトリンク | 5 外部サイトへ誘導する場合の留意事項 |
外部サイト(自社海外サイト含む)へリンクする場合は、当該サイトを離れることを明示すること |
- 出典:日本製薬工業協会(2019年)「製薬協コード・オブ・プラクティス」pp.133-pp.135
この表の中で特に重要な点のひとつが、先ほどの「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」とも共通する、特定の医薬品の広告と解釈されないように、内容は疾患の説明を原則とすること。疾患の説明時には薬物治療だけでなく、安静、運動療法、栄養療法、外科的治療等、通常想定される治療法について公平に記載
するという点です。特定の医薬品しか治療の方法がないと誤認されることのないような疾患啓発サイト作りを心掛ける必要があります。
もうひとつが、「一般人を対象とした病院検索サイトについては、自社製品の納入先のみの掲載はしない」ように推奨されている点です。メディウィルでも「いしゃまち病院検索」という病院検索サービスを提供するなかで、ガイドラインに沿った病院検索を構築できるように支援しております。
コンプライアンスに関する社内連携も重要に
また、疾患啓発を進めるにあたって、社内のコンプライアンス部門との連携も大切です。「ホームページへのコンテンツ掲載に関する指針」の「3.3 会員会社の製品や疾患に関心のある一般人を対象としたコンテンツ」によると、
疾患啓発に関するコンテンツ掲載にあたっては以下の点(※一部を上図に抜粋)に留意し、営業部門から独立した社内審査体制の主管部門による社内審査を経ること
- 出典:日本製薬工業協会(2019年)「製薬協コード・オブ・プラクティス」p.133
とあります。
そのため、患者さん向けの疾患啓発を進めるにあたっては、発信したい情報の内容が社内のルールに則っているかコンプライアンス部門等に確認してもらうことが大切です。できれば疾患啓発のコンテンツ作成前に企業内の情報発信の方針について相談しておくと、プロジェクトがより円滑に進むと考えられます。
おわりに
今回は患者さん向け疾患啓発の際に注意すべきガイドライン上のポイントについて紹介しました。具体的にどのようにして疾患啓発プロジェクトを進めていくのか興味がある方は、ぜひメディウィルの事業開発チームに相談してみてください。
問い合わせ先:https://www.mediwill.co.jp/contact
- ※1 出典:厚生労働省(2018年)「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」p.2(最終閲覧日:2024年2月28日)
- ※2 出典:厚生労働省(2018年)「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」p.3(最終閲覧日:2024年2月28日)