株式会社メディウィルは、株式会社インテージヘルスケアとの共催オンラインセミナー「疾患啓発の新提案~ROI測定の可能性~」を2024年6月27日に開催しました。講師は弊社の城間波留人(代表取締役)と、株式会社インテージヘルスケアの 紫竹宏亮氏(マーケティング・インサイト事業部 ビジネスデザイン部 部長※1)が務めました。2回にわたり、当日の講演内容をまとめます。後編では紫竹氏の発表内容とQ&A、アフタートークについてまとめます。(2/2)
【前編】インテージヘルスケア紫竹氏講演まとめ~オンラインセミナー「疾患啓発の新提案~ROI測定の可能性~」より~はこちらから
※1 役職名は2024年6月時点。現在はマーケティング & バリューインサイト事業部 ヘルスケアマーケティング部 部長。
目次
はじめに
インテージヘルスケアの紫竹です。これまでアドホック調査を8年間、シンジケート(Impact TrackやDoctor Mindscape)といった自主企画調査を7年間、その後は経営企画・計画事業開発を2年ほど担当し、2023年から現在のマーケティング・インサイト事業部 ビジネスデザイン部に所属しています。こちらでは課題に対して通常のマーケティングリサーチだけではない解決策の提案を行っており、本日のテーマにあるROI測定もインテージグループのアセットを用いて提案しています。
改めて疾患啓発(DTC)に関する課題感を共有します。多くの製薬・医療機器メーカーが消費者(患者さん)向けサイトを用意していて、その目的はさまざまです。そのひとつには消費者(患者さん)にサイト内で疾患・治療を認知してもらい、その後「いしゃまち病院検索サービス」のような機能で医療機関を検索、最終的に受診してもらうための導線作りが挙げられます。この目的を達成すべく、メーカーはテレビCMやデジタルサイネージなどいろいろな形の広告を用いて、サイトに人を集客できるよう取り組んでいます。
メーカー側から見たとき、上図青枠の部分(サイト訪問から医療機関検索)はよく理解されていて、PV数や医療機関の検索までのコンバージョンレートなど何らかの目標値(KPI)等を設定して活動されていることでしょう。一方で青枠以外の部分、例えばDTCを通じてのアクセスについては、どういったサイトを経由して訪問したのかひとつ前は分かります。しかし、いろいろなサイトを経由したり、さまざまな検索ワードを試したりする中でたどり着いたという流れがあるなかで、消費者(患者さん)がどのように情報探索を繰り返してきたのか全てを把握することはできません。
またメーカーのサイトを離脱した後、別のところでどのような情報を閲覧しているのかも、把握することは難しいです。特に本日の目的でもあるROI、つまりサイト閲覧後に実際受診したのか、もっと言えば自社の薬剤や製品が処方されたのかまで分かって初めてROIになるでしょうが、この把握が難しいという点が、城間さんのお話にもあったようにメーカーを取り巻く課題のひとつと考えています。
WebサイトやDTCによる効果(ROI)測定に対して、本日ご紹介するdi-PiNK(ディーアイピンク)というものを用いて、不透明な受診行動の部分を把握していく点が本日のテーマのひとつです。
di-PiNK(ディーアイ ピンク)~施策の効果検証~
di-PiNKとは、ドコモ会員を基盤としたマーケティングのプラットフォームです。このマーケティングプラットフォームを使っていろいろなことが可能で、今回はROI測定のためにどう活用するのかご紹介します。
まずdi-PiNKタグを、分析したいメーカーのサイトに設置してもらいます。そうすると、Cookie情報をキーにして、ドコモ会員の方がアクセスするとそこにフラグが立つ仕組みになっています。もちろん個人情報は分かりませんが、これによって来訪したというフラグが立ち、来訪していない方はフラグが立ちません。
この情報を基にして、分析もしくはアンケート調査が可能となります。分析は主に属性に関するもので、di-PiNKについてドコモの情報を含めてさまざまな要素を持っているので、それらを掛け合わせることで訪問した方・していない方の違いを明らかにできます。
例えばある疾患啓発サイトが20~30代の女性に見てもらうことを想定して作られた場合、そのターゲットがしっかり閲覧しているかが大事な点です。di-PiNKを活用することで実際の来訪者全体における20~30代の割合や、di-PiNK 登録者全体における20~30代の割合としても多く来ているかどうか確認できます。何かしらのプロモーションやDTCを実施して、目的とした特性の方が時系列で見たときに増えているかどうかも、このフラグを基に属性分析することで確認が可能です。
また、来訪者の方に対するアンケート調査を行って見えてくるものがあります。通常のマーケティングリサーチのアンケートでも専用モニターに対して同じように調査をかけることができますが、思い出しながら回答してもらうので、実際にサイトを訪問した方もいれば、訪問したが覚えていなくて回答できない方や何かしら勘違いをして回答している方などがいます。di-PiNKの仕組みが良い点は、サイトを必ず踏んでいる(アクセスしている)ことがベースとなる形で調査をかけられることです。サイトに来ている方・来ていない方が既に分かっている状態で調査・分析のアンケート徴収ができる点が、ひとつのポイントと捉えています。このアンケート調査によってサイトを見た方の疾患認知率や症状への対応、実際の受診行動で何の薬剤が処方されているかなどを確認することで、Webサイトの効果(ROI)の測定が可能になります。
もちろん既に受診されていて、どのような処方薬剤を使っているか把握している上でメーカーのサイトを訪問し、使用している薬剤の情報を再確認する方もいると思います。そうした方についてもこのアンケート内できちんと確認することで、受診行動を促す目的に加えて、実際に受診している方もサイトを利用しているのかも把握できます。さらにサイト未接触の方向けにアンケート配信をして回答してもらうことで比較もできるので、サイトの意義を把握することも可能です。
こちらは、多汗症という疾患を例に調査の大きな枠組みを作ったときのイメージです。多汗症のようになかなか疾患としての認知が難しいケースの場合、アンケート調査で下記の項目についてサイトを来訪している方と非来訪者を比べることができます。
- 疾患認知が上がっているのか
- 受診しようと思っているのか
- そもそも当てはまる症状を持っているのか(自覚しているのか)
また、実際に対象サイトをしっかり覚えている方に関しては、
- サイト内で印象に残っている内容
- そもそもどうしてこのサイトに来たのか
についても確認できます。
この対応をするときのポイントが、ホームページに対するタグ設置です。タグ設置にあたっては、プライバシーポリシーのページ更新が必要です。ちなみにサードパーティCookieについては今後使えなくなるという話も出ていてどうなるか不透明ですが、この仕組みはIntimate Merger社のポストCookieソリューション「IM-UID」(外部サイトに遷移します)を採用しているので、その代替として問題なく対応できます。
また、インテージグループとして展開しているときには、一般消費財や耐久消費財等を扱うさまざまなメーカー様にご利用してもらっています。そうしたケースでは、サイトに来た方に対して例えばプロモーションやアンケートなどを行う可能性があるので、既にプライバシーポリシーやオプトアウトに関するガイドラインで対応されている状態です。ですので、対象企業に今回のドコモインサイトマーティングやインテージヘルスケアといった名前を入れていただければ問題なく対応できます。
しかし製薬企業・医療機器メーカー様の場合、そもそも上記の対応になっていない場合が多い印象です。2024年1月以降さまざまな企業様にまずはトライアルとして提案していますが、一緒にいろいろ検討・対応するなか、法務の部分で引っかかりなどが生じて確認に時間を要するケースが非常に多くなっています。その点が今回の仕組みを提案しているなかで、壁になってくると感じています。
検討された結果「対応が難しい」という結論になると今回の提案も終わってしまいますが、別の仕組みとなる「対話型プロモーション」もあるので、こちらをご紹介します。
補足)タグ対話型プロモーション~di-PiNKタグの設置が難しい場合には直接DTC効果検証も可能~
こちらは単純にプロモーションをダイレクトに行うというサービスです。dポイントクラブの方たちを対象に、約10年前から弊社グループとドコモが一緒に行っているサービスの一環として対応しています。
約700万人が最大対象者になり、この方たちにはプロモーションをすると許諾をいただいています。
具体的には、対象となる方を事前にセグメント等で絞った上で配信して直接プロモーションをかけていきます。こちらもアンケート方式のようになっていますが、通常のリサーチとは異なり、興味喚起~魅力訴求~許諾といった形でどんどん対象への関心を醸成させていきます。プロモーションコードには引っかからない形で疾患の存在を知ってもらい、「もしかしたら自分にも当てはまるかもしれない」といったプロモーション形式の疾患啓発を行うことができます。
さらにメーカーサイトに送客もできますし、実際にその後アンケートで下記の点を確認する枠組みになっています。
- 疾患啓発ページを見たか
- 今回のプロモーションを受けて、疾患の認知が上がったか
- 受診について自分事化して医療機関に行こうと思えたか、もしくは既に受診しているのか(受診行動の有無)
ひとつのスマホ、一人のドコモ会員の中で完結する対応ができる仕組みといえます。
最後に
本日はdi-PiNKと対話型プロモーションによるROI測定についてご紹介しました。我々は受診行動をもっと・常に追える未来ももちろんあると考えています。病院が位置情報をより細かく取れるような世界もあるでしょうし、(もちろん許諾されている前提で)個人の薬歴(薬剤服用歴)をスマホにつなげて対応することで、その方がいつ実際に病院へ行って、いつ何の薬剤が処方されたかデータ更新されていく世界になるかもしれません。それが実現した暁には、製薬企業・医療機器メーカー様のサイトを踏むことで、そもそもサイト訪問前はどうだったのか判明した状態で、サイト訪問後にどうなったのか、来訪者の属性を見ることができます。そして最終目的である受診行動・処方に関しても押さえることができると考えています。
ただ、受診には本当にさまざまな要因がありますし、疾患啓発を行うメーカーサイトもそのきっかけのひとつだと思っています。個人のマインド面における受診に至るKPIには、常にいろいろな要素があるでしょう。そこはどうしてもアンケートでないとなかなか分からない指標ですし、実際にマーケティングリサーチを行う必要はあると感じています。
その場合、もちろん目的に応じて必要なものを必要な形で分析できるような世界が大事になるでしょう。最終的には今回の目的である受診行動・処方の状況が常に把握できるようになれば、我々の提案もさらに皆様のお役に立つ形にできるのではないでしょうか。ご清聴ありがとうございました。
Q&A、アフタートーク
城間:大変興味深いご提案をありがとうございました。今から参加者の皆様からご質問をいただく前に、私の方からお伺いしたい点がいくつかございます。
アンケートは大変重要だと思う一方、アンケートをどう設計していくかは皆様にとって非常に悩ましい点かと感じました。御社は随時アンケート調査に携わっていると思いますが、アンケート設計のポイントやどうサポートしているか、普段はどのように対応しているかも含めて、コメントいただけますか?
紫竹:ありがとうございます。弊社は医療領域では国内ナンバー1と自負しており、年間700本以上のリサーチ案件を皆様にお届けしています。今回のようなROI測定を考えるときに、最終目的は先ほどお話しした通り受診行動・処方薬剤の把握でしょうが、それだけを追ってもなかなか結果は出てこないと思っています。というのも、サイトを見て疾患を認知したからといってそこですぐ受診に至るかと言われると、実際の受診までかなり期間が空くでしょうし、最後に申し上げたようにさまざまな要因が絡み合ったからこそ、受診という行動に移っています。それでも受診のきっかけや後押しのひとつとして、疾患啓発やWebサイトは重要な要素であると感じています。メーカーの皆様が自社でサイトを作った場合、この活動に意味があるか非常に興味を持っていただいていると思います。最終的に受診に結びつくことが理想ではありますが、途中段階でも「御社がメーカーとして大切にされている点・外せない点」をアンケートの中にしっかり盛り込んでそこを定点的に見ることで「うまくいった・いっていない」を確認することが、意図として重要と考えています。
城間さんの資料の最後にもありましたが、右脳の部分が相当大事だと私も考えていて、SDGsや患者貢献、ペイシェントセントリシティといった点ももちろん役割のひとつであると思っています。メーカー様に提案する際は「何を大事にされているか」といった点も含めていろいろな点を指標として提示し、それをアンケート項目として、しっかり探っていくことを重視しています。
城間:ありがとうございます。もちろん最後の薬が処方されたかどうかも非常に大事ですが、今のお話を伺って、その前段階で疾患認知がどうなっているのか、それによってどのように行動が変わったのかをアンケート調査によって定点でとれることは、非常に重要だと思いました。
Q.今回のご提案について、アンケート回収率はどのぐらいでしょうか?
紫竹:まだ製薬・医療機器メーカー様には提供できていませんが、一般消費財を扱う企業様には日頃から実施しているサービスですので、そちらを基にお話します。di-PiNKはアンケート専用のモニターではなくドコモ会員の方を対象としたものなので、アンケート専用だと回収率が2~3割ほど常にある一方、di-PiNKは2~3%程度が目途になります。単にサイト送客だけを目的とした場合は、1割程度効果が出てくることもあります。7600万アカウントと母数が非常に大きいのでこのような結果となっていますが、回収率はこの程度と考えていただきたいです。
城間:di-PiNKのサービスは一般消費財についてはいろいろと取り組んでいるものの、製薬企業・医療機器メーカー様による導入はこれからになるのでしょうか?
紫竹:製薬メーカー様に関しては2社ほどかなり前向きに捉えていただいて現在も取り組みが続いていますが、サイトに設置するタグが課題になっています。ただ、この課題によってプロジェクトが終わってしまうのはもったいないと思ったので、後半ご紹介した対話型プロモーションを用意しました。製薬に関してはこれから、というところです。
城間:タグの部分がクリアされると非常に開かれる印象を私も受けましたので、おっしゃる通りだと思いました。
Q.貴社のモニターパネルの属性(性別、年代など)の構成について、ざっくりで構わないので教えていただけますか?
紫竹:モニターの母数はドコモのdポイントクラブに加入されている7600万人の方たちです。お仕事で使っている方たちは除いており、日本の人口にかなり近い形になっています。もちろんスマホを使っていない高齢者の方や10歳未満でまだスマホを持っていない方は含まれていないため、そういった年代の方は構成として少なくなりますが、それ以外は性別も年齢も広く分布しているとお考えください。
Q.先ほどCookieの話がありましたが、Cookieで紐付けできるのは来訪者の何割程度でしょうか? ケースバイケースだと思うので、ざっくりで構いません。
紫竹:Apple関係の場合はそもそも紐付けが難しい仕組みなので未来に向けての対応になりますが、我々は違う形でも紐付けができる仕組みを現在作って対応しています。基本的にはどなたでもサイトを訪問すれば(推定も一部含みますが)つながる形でご提供しています。
Q.Webサイトの追跡調査について、どれくらいの来訪者がいるサイトであればこのパネルで検証できるという、ベースラインのようなものはありますか?(「ページビューやユニークユーザーなどが毎月どのぐらいあるといいのか?」という点について。例えば希少疾患のサイトだと、そもそもの来訪者が少ないため)
紫竹:di-PiNKはまだ製薬の分野でタグ付けできておらず、実際どれくらいあればという回収まではできていませんが、MAU(Monthly Active Users)として10万人以上は欲しいというのが正直なところです。ただ、そうすると「希少疾患のサイトで行う意味があるのか」という話にもなってきます。だからこそ対話型プロモーションのように、該当サイトへ送客するケースもあります。別途そういった希少疾患を認知させたり、本日ご紹介していない送客サービスを活用できたりすると考えています。
そもそも希少疾患は疾患名を知って検索している方は、今までに何かしらの経緯があるからこそその疾患について検索できているといいますか、何かしらの症状に関連する希少疾患がいくつか出てきて、それをさらに調べるといったケースもあるでしょう。そういう疾患を調べている方含め、「自社のサイトに来ている方はどんな理由で来たのか」という課題もあるかと思います。これはdi-PiNKとは少し異なりますが、初期段階の課題である「そもそもこの人はどういった経緯でこのサイトに来ているのか」、あるいは「競合サイトを訪問しているのか」という点については、別途データがあります。実態を分析したり、送客の仕組みを使ってまずは実際のサイトを見てもらって自分事だと意識してもらったりといった提案を、我々は現在行っています。
Q.タグの設定について、メーカーさんにはどのように依頼されていますか?
城間:現状では法務の壁・コンプライアンスの壁を超えるにあたって、どのようにお願いされているかという流れがあれば教えていただきたいです。
紫竹:タグ自体はドコモ・インサイトマーケティングが用意しているものなので、「こういうやり方で対応してください」という資料をお渡しして、対応可能かどうか見ていただいています。ただ、もちろん担当者の方も専門ではないと思うので、我々やドコモ・インサイトマーケティングの方が一緒に入って対応可能か説明したり、法務ご担当者の方をはじめいろいろな部署から来る質問にお答えしたりといったフォローをしています。
城間:今まさにこれからというお話なので、数ヶ月ぐらいはかかる形で徐々に動いていく感じなのでしょうか?
紫竹:そうですね。ページ数が多いものではありませんが対応をまとめた資料をお渡しして、そちらを見ていただき行動してもらうのが現段階で提案しているやり方です。
Q.アンケートの回答の正確性(実際に回答者が正確に・正直に答えているかどうか)は、どのように担保されていらっしゃいますか?
紫竹:これは通常のアンケートもそうですが、特に一般の方に対してはダミーの質問を用意して、本当にこの方たちが対象疾患の患者さんなのかどうかを最低限担保できる形で進めています。いい加減な回答に関してフィールドリサーチ・フィールドサイエンスのような要素もありますが、本件に限らずマーケティングリサーチツールで回答時間や段階・スキル評価(例えば選択式の複数の問いに対し、連続して同じ記号の回答欄にチェックを入れていないかどうか、自由回答がいい加減な内容になっていないかどうかなど)を確認してデータクリーニングの対策をしっかり行い、その状態で集計やレポートを作成しています。
Q.もし調査をお願いした場合の、おおよそのご予算感・費用感はいかがでしょうか?
城間:これは本当に概算といいますか、ケースバイケースになると思うのですが、目安としてはどうでしょう。
紫竹:まずdi-PiNKのタグを設置させていただくのに、1ヶ月間で30万円ほどかかっています。もちろん現在我々はトライアルをしている段階ですので、いきなり30万円で開始するのではなく、まずは無料でタグ設置して実際にどれぐらいサイトが訪問されていて、どのぐらい回収できるかを見ます。
他にも例えばdi-PiNKの対象者にアンケートをとったり、対話型プロモーションで対応したりという場合には、通常のアンケート・リサーチの費用がベースになってきます。通常のリサーチのように何問も何問も聞くというより、大体5問程度で終わるような調査が多いので、仮に5問3万サンプルで実施すると150万円以上、3問1万サンプルでは百数十万円以上を想定していただきたいです。どのリサーチであってもいろいろなスクリーニング条件やオプション、納品物の種類といったさまざまな要素が加わってくるので一概には言えませんが、その都度金額は上下します。ただ、何百万円かかるといった金額感ではなく、先程申し上げたベースでの実施を提案しています。
城間:「タグ設置の30万円の費用には、データ分析のコースも含まれますか?」という質問を追加でいただいたのですが、これはまた別コースになりますよね?
紫竹:30万円はタグの対応費に当たります。
城間:その上でいろいろなアンケートの数や設計によって、分析の費用が変わってくるということですよね?
紫竹:そうです。
Q.高齢患者が多い疾患について啓発を実施する場合、デジタル親和性が低い方が多く、十分に情報が届かない可能性もあると拝察しています。高齢者疾患の啓発を実施する場合、デジタルもしくはそれ以外の方法含め、何か有効なご知見はございますか?
城間:先ほどご紹介した骨粗鬆症のプロジェクト「骨検」がまさにそういった疾患に当てはまるかと思いますし、非常にリーチが難しい世代層と認識しています。ただ、その中でできる範囲のデジタル施策として、実は現在SNS広告運用をかなり活発に進めていて、その中で特に高齢女性にリーチできるメディアをうまく活用してカバーしています。このやり方はデジタル広告の運用の利点で、いろいろなソリューションを試しつつ、効果が出ているものを残してそこに集中していくことができます。先ほどは検索周りのソリューションを中心にご案内しましたが、今SNSにはさまざまなサービスがあります。うまくターゲットの年代層に近いところと組み合わせることでそれなりの効果が出ている部分もありますので、もしご興味がありましたらぜひ我々の事業部にご相談ください。
Q.希少疾患の場合、検査・診断にたどり着くまで時間を要するため、サイト閲覧から専門医情報を得て直接医療機関に連絡するという流れは理解できるのですが、現実的に基幹病院に集中している専門医へアクセスするために都会の病院に電話して、診察に結びつくケースはあるのでしょうか?
城間:非常に鋭いご質問で、おっしゃる通りだと思います。今回のテーマと重なりますがどうしてもインターネット上では、本当に潜在患者さんがその病院へ行ったかどうかをなかなか把握できません。そういった前提がある上でのお話として、ある疾患について現場の声をヒアリングして共有してもらった際に、いしゃまち病院検索サービスを使ってその病院にたどり着いたという声が上がってきたケースがありました。
また先ほどコールセンターのケースもお伝えしましたが、Webと専門のコールセンターが担当する相談窓口が非常に相性がいいこともあります。くるこつ広場の事例が鑑別診断を受けるにまで至った事実は、Web上だけでは分かりかねる部分をコールセンターの方々に補完してもらっていることを示しています。
いろいろな組み合わせによって疾患に近づく情報を得られる可能性があり、本日の紫竹さんにご提案いただいている内容も「これができたら本当にいろいろなことが分かるな」と強く思いながら、お話を伺っていました。すべてをデジタルで完結させるよりも、医療現場の方々からのヒアリングや今回のdi-PiNK、コールセンターといったさまざまなものをデジタルと組み合わせて情報に近づいていくことが、現時点では最適ではないかと思いながら、いろいろなプロジェクトを進めています。
アフタートーク
城間:ROIは長年の課題ですし、我々もなんとか測定できたらと願っているので、紫竹さんのお話は解決の糸口になるものだったと思いました。もしよければ、紫竹さんから何かフィードバックとコメントを私にいただければ。
紫竹:協和キリン様の事例に関しては、希少疾患だからという側面もあるかもしれませんが、まさに御社と協和キリン様で行うアクションとROI測定が売上まで直結する形で行動や対応と結びついているところが、すごくいいと感じています。疾患啓発をやるからには、どのような価値があったのかどうしてもメーカー内で問われてしまいます。先程から売上ではない部分も重要とお伝えしていますが、コールセンターの事例は売上の部分まで一気通貫で分かる好例です。そのようなリアルな施策との組み合わせについて、非常に勉強になりました。
城間:ありがとうございます。確かに最後はいかにターゲットが受診してしっかり診断・治療・(薬剤を)処方されることがゴールです。その間にいろいろなプロセスで、離脱されたり漏れがあったりという状況についてご説明しました。疾患啓発の設計の部分でいかに全体を底上げしていくか、そのためにあの手この手で施策を打っていくことがまず重要なポイントだと考えます。そこに本日紫竹さんからご紹介のあったソリューションのような、定点でのアンケート調査等でしっかり追っていくことができれば、非常に魅力的な施策になると感じました。様々なソリューションを組み合わせることで、最終的に疾患啓発をさらに活発な活動にしていける未来を想像しながら、お話を伺っていました。