COLUMN 【前編】メディウィル城間講演まとめ~オンラインセミナー「疾患啓発の新提案~ROI測定の可能性~」より~

株式会社メディウィルは、株式会社インテージヘルスケアとの共催オンラインセミナー「疾患啓発の新提案~ROI測定の可能性~」を2024年6月27日に開催しました。講師は弊社の城間波留人(代表取締役)と、インテージヘルスケアの紫竹宏亮氏(マーケティング・インサイト事業部 ビジネスデザイン部 部長※1)が務めました。2回にわたり、当日の講演内容をまとめます。前編では城間の発表内容についてまとめます。(1/2)

【後編】インテージヘルスケア紫竹氏講演まとめ~オンラインセミナー「疾患啓発の新提案~ROI測定の可能性~」より~はこちらから

※1 役職名は2024年6月時点。現在はマーケティング & バリューインサイト事業部 ヘルスケアマーケティング部 部長。

※2 メディウィルでは、ペイシェントジャーニーにまつわる活動のなかで患者さんの心にも寄り添いたいという思いを込めて、「沿う」ではなく「添う」の漢字を使用しております。

はじめに

メディウィルは2006年に創業し、クリニックなどの医療機関向け、特に歯科向けのデジタルマーケティングのソリューション事業からスタートしました。その後2014年にWebメディア「いしゃまち 家庭の医療情報」を立ち上げ、2018年に「いしゃまち病院検索サービス」というカスタマイズできる病院検索サービスをリリースしました。同年キリンアクセラレータープログラム※3に採択いただいたことをきっかけに、現在では製薬企業・医療機器メーカー向けの疾患啓発事業を中心に注力しています。

※3 キリンホールディングス株式会社による共創支援のもと、選出された企業が食品・ヘルスケア・メディカルなどの領域で新たなビジネスプランに挑み、健康的な未来を目指すプログラム。

本日のテーマである疾患啓発について改めて整理すると、まず医療用医薬品や医療機器といった許認可が必要な製品は、基本的に医薬品・医療機器メーカーから医療従事者を介して患者さんに提供されています。一方で疾患啓発に関しては、事業者が直接患者さんたち向けに情報を発信・提供し、その情報を基に患者さんやご家族が自ら最適な医療を受診するという流れ(上図赤矢印)になっています。日本における疾患啓発の特徴として、広告規制があるため製品名の告知はできず、疾患名による周知・告知は可能であることが挙げられます。

このような状況を踏まえつつ、我々は病院検索サービスを軸にデジタルマーケティングと組み合わせてワンストップで疾患啓発をサポートしており、その他顧客の要望に合わせて個別にデジタルマーケティングソリューション(デジタル戦略の支援、広告運用、SEO対策、Webサイトの構築など)を提供しています。

この後また改めて紹介しますが、病院検索サービスはEAファーマ様、協和キリン様、旭化成ファーマ様ほか、さまざまなお客様に導入していただいています。

疾患啓発のフローは、デジタル広告や自然検索経由で疾患啓発サイトを訪れた潜在患者(未受診の患者)さんを、病院検索サービスを通じて専門医への受診につなげるというものです。ただ、我々が事業展開するなか長年課題のひとつになっているのがROIに相当する「患者さんは実際に病院に行ったのか?」「受診して処方につながったのか?」を測定することが非常に難しい点、つまりインターネットと実際の現場との乖離がある点です。この測定ができないかが本日のテーマであり、インテージヘルスケアの紫竹さんとともに可能性を探っていきます。

インターネット上のペイシェントジャーニーに添った※2疾患啓発(DTC)の設計

まず、疾患啓発の設計についてご案内します。昨今のインターネット時代において健康医療情報を収集する際に一番多い方法はインターネット検索で、健康医療情報と非常に相性がいい分野のひとつといえます。

インターネット検索の直近のシェアを見てみると、日本ではGoogleが約80%と多くを占めています。そしてYahoo!(10%超)、Bing(10%弱)と続きますが、実はYahoo!の裏側ではGoogleの検索エンジンが動いているので、約9割がGoogleのシェアとなっています。ただ直近では、MicrosoftのBingのシェアが上がっており、特にパソコンでのシェアは非常に伸びていてYahoo!を抜いています。特に生成AIのチャットGPTが登場してから、Microsoft関連のソリューションの勢いが非常に高まってきていることを実感しています。

今度は「患者さんが病院情報をどのように探すのか」に関する2014年と2019年のアンケート結果を比較しながら見てみましょう。「家族や知人の評判」や「かかりつけ医の紹介」の比率が下がった一方で、「病院のホームページ」や「病院検索サイト」を見る方々は増えています。やはりインターネット時代では、自ら情報を探していく傾向が見られるようです。ただ、広告可能な診療科名は約100種類、学会等の専門医も90種類あるため、一般の方々がこの中から自分に最適な病院・診療科を選ぶことは非常に難しくなっています。だからこそ、病院検索やホームページでしっかりと情報提供し案内していくことが非常に重要だと認識しています。

日本製薬工業協会が実施した「希少疾患の患者さんの困りごと」に関するアンケート調査の中でも、希少疾患の発症時においてアンケートに回答された方々の5割が「どの病院・どの診療科を受診すべきか分からなかった」と答えています。この結果は多くの方にとって「どの病院・どの診療科に行けばいいのか分からない」ことが受診の障壁である状況を示しており、この傾向は希少疾患に限らないと捉えています。

こうした障壁を取り除いて患者さんに最適な医療を届ける流れをまとめると、疾患啓発サイト等の疾患情報を認知させる段階、行動変容を促す段階、実際の病院検索サービスを経て受診につなげる段階のそれぞれで、サイト訪問者の離脱・漏れが起きていると考えられます。こうした離脱・漏れを改善するために「疾患認知を向上させ集客につなげるためのデジタル広告(SEO)に取り組む」、「行動変容に至るための疾患啓発サイトを設計し病院検索サービスを設置する」、「病院検索サービスを用意する際に使いやすいUI・UXの病院検索サービスを選ぶ」といった点をひとつひとつ考えながら、疾患啓発全体のデジタルマーケティングを提供していくことが非常に重要です。

「いしゃまち病院検索サービス」を活用した疾患啓発(DTC)の事例

ここからは我々が提供しているソリューション「いしゃまち病院検索サービス」を軸にした事例をご紹介します。弊社は旭化成ファーマ様が2020年12月から現在まで展開する、骨粗鬆症の疾患啓発活動「骨検-骨にも検診プロジェクト-」(外部サイトに遷移します)のデジタルマーケティング関連をずっとお手伝いしています。このプロジェクトは「骨粗鬆症のリスクに気づいていない方に早めにDXA検査を受けていただきたい」という、会社全体の強い思いから発足しました。DXA検査を受けられる病院の施設情報の提供を最終的なゴールに設定して、どのようにそこまでつなげていくかに取り組んでいます。

日本ベクトン・ディキソングループのメディコン様においては、鼠径部ヘルニアという40代以上の男性に多く、年間15万人の方が治療を受けている疾患の啓発活動「そけいヘルニアノート」(外部サイトに遷移します)を支援しています。鼠径部ヘルニアは初期症状では痛みが少なく、また「恥ずかしい」「怖い」といった理由からなかなか受診に至らないという課題があります。疾患の情報提供に加え、適切な診療科である外科や消化器外科への受診を促せる病院検索の流れをワンストップで提供するために、2021年から現在まで活発に取り組んでいます。

その他にも慢性便秘症について相談できる病院検索をEAファーマ様に導入していただいたり、希少疾患であるANCA関連血管炎に関する情報発信を行うキッセイ薬品工業様に対して、何科を受診すればいいのか分からない方向けに専門医療機関をスムーズに探せる導線を提供したりしています。

ここからは協和キリン様の「くるこつ広場」(外部サイトに遷移します)のケースを掘り下げてご案内します。2020年にFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症という希少疾患の疾患啓発プロジェクトがスタートし、同サイトをプラットフォーム化しながら今なおさまざまなコンテンツによる情報提供を積極的にされています。

プロジェクトのそもそものきっかけは、最初の面談でプロジェクトの中心となる方々と交わした議論にありました。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の薬の上市を控えるなか非常に多くの課題があり、そのひとつが、潜在患者さんが約6000人いると言われているにもかかわらず、その10%に満たない患者さんにしか治療がいきわたっていない点でした。どのようにして潜在患者さんに疾患の存在を気づかせ、適切な医療機関を受診してもらうか―。希少疾患に限らず受診率が低い疾患において、多くの製薬企業・医療機器メーカーの方々がこうした課題感・お悩みをお持ちではないでしょうか。

このような背景を踏まえ、FGF 23関連低リン血症性くる病・骨軟化症について相談できる病院検索サービス「いしゃまち病院検索」をセットにした疾患啓発サイト「くるこつ広場」を2020年9月にリリースしました。

先ほど触れたサイト設計の話題でお伝えした通り、リリースしてもアクセスがないと誰にも見てもらえない状況になりますので、リスティング広告、ディスプレイ広告等のデジタル広告を活用して、まず集客を支援していきます。

とはいえ希少疾患の疑いがある患者さんに情報を提供することは非常に難易度の高いプロジェクトなので、以下のように考えられるいろいろな手を打ちました。

  • 専門医の病院データベースを毎月更新する
  • 学会と連携して、学会サイト内にバナーを貼ってもらう
  • KOLの医師にインタビューしたコンテンツを制作する
  • 希少疾患の患者さんの体験談を掲載する
  • コールセンターの設置

さらにこのプロジェクトがもともとキリンアクセラレータープログラムをきっかけにスタートした経緯もあったので、キリンホールディングスの方々にもご協力いただきました。具体的には、同ホールディングスホームページ内の「Unmet Medical Needsを満たす医薬品の提供」ページ(外部サイトに遷移します)でくるこつ広場を紹介していただいています。

潜在患者さんが疾患啓発サイトを利用するイメージを、くるこつ広場を例に説明すると下記のような流れになります。特にスマートフォン世代の利用者が多いため、スマートフォンからワンストップで情報にアクセスできるような設計を意識して支援しています。

  1. 「骨折しやすい」という症状に関するキーワードで検索する
  2. 検索結果で上位表示された「くるこつ広場」のコンテンツを見つける
  3. 「くるこつ広場」へアクセスし、希少疾患の情報を知る
  4. もし自分や家族に関係ある疾患かもしれないと思った場合は、そのまま「いしゃまち病院検索サービス」へ遷移する
  5. 位置情報から自宅付近にある専門医の病院の一覧を取得可能な「いしゃまち病院検索サービス」で、病院情報を入手したり病院ホームページを閲覧したりする。(スマートフォンからのアクセスの場合は)電話での問い合わせができるため必要に応じて活用する


取り組みの結果、2023年5月に発表された協和キリン様のアニュアルレポートの中で、くるこつ広場の活動は医薬品にとどまらない価値の提供であるとご紹介していただきました。また、プロジェクトに導入している電話相談(くるこつ電話相談室)では2022年7月~2023年6月までの1年間で103件の相談対応が行われ、うち5名の方が専門医を受診し、そのうち2名の患者さんが確定診断されたというアンケート結果があったことも、プレスリリースしていただいています。

最後に

ワンストップでソリューションを提供しているなか疾患情報をしっかりと認知(SEO対策・デジタル広告)させ、行動変容(疾患啓発サイト)を促し、病院情報を提供(病院検索サービス)して、専門医を受診してもらい革新的な医薬品や医療機器による最適な治療につなげていくという、ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発のサービスが、このインターネット時代において非常に重要だと考えてサポートしています。

最後に病院検索サービスに関して、「自社製品の納入先のみの掲載はしない」という注意点がありますので、導入時にここだけはご留意していただきたいです。

疾患啓発においては受診率が低くても競合優位性がある分野かどうか検討したり、費用対効果を考えたりしていくことは重要です。と同時に、患者さんや医療従事者からの共感を得ることも非常に大切だという声を現場からいただいています。あるいは会社全体のビジョンに合うこと、SDGsに貢献することも非常に価値あることだと、旭化成ファーマ様の骨検プロジェクトが始まったときに担当者の方からお聞きしたこともありました。

今後疾患啓発を実施する上で、こういった考え方をぜひ活用していただけると幸いです。とはいえやはり「ROIが気になる」と多くの方々からフィードバックをいただいていますので、後半からはROIに関する解決の糸口になるようなソリューションをお持ちのインテージヘルスケアの紫竹さんにバトンタッチします。

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投稿日:2024年07月29日

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