株式会社メディウィルでは、KDDI株式会社 サービス統括本部 シニアエキスパートの田口健太氏を招いたオンラインセミナー「KDDIのヘルスケア事業戦略~『auウェルネス』が目指す未来~」を2024年3月19日に開催しました。司会は弊社代表取締役の城間波留人が務めました。2回にわたり、当日の講演内容をまとめます(2/2)。
【前編】KDDI田口氏セミナーまとめ①~「KDDIのヘルスケア事業戦略~『auウェルネス』が目指す未来~」~はこちらから
目次
3.KDDIによるヘルスケア事業について
ここからが、今回の本題です。KDDIは個人/患者などの需要サイドが当然強い会社ですが、企業や自治体、医療機関などの供給サイドも含めた需要/供給の両側面からDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献していきたいと思っています。上図中央の青い図は先ほど(前編で紹介)と同じで、構想図のような全体感を表現しています。需要サイド(上図上部)では、データや「auウェルネス(※外部サイト)」」というトータルなヘルスケアアプリを軸にして、運動支援、食事支援、予兆把握から、治療支援、オンライン診療、オンライン服薬指導に至るまで、提供できる範囲を次々広げていくことを目指しています。最終的には我々の得意な領域で上図最上位にある通信、AI、行動変容、IoT、ドローン、スマートデバイス、ウェアラブルなどを組み合わせて、多角的な個人への貢献につなげていくことを目指しています。
かつ供給サイド側も、法人サイド向けの売り上げがあると申し上げたように、上図左下の企業/自治体/健保組合から始まり、製薬/医療機器メーカーや、医療機関/薬局などのヘルスケアのプロバイダーの方々にも様々なデジタルサービス・ソリューションを提供するなかで、供給サイドのDXを後押しすべく取り組んでいます。
今回はこのなかから①PHRアプリを軸にした様々なサービスを個人向けに提供していることを中心にご紹介し、②データ事業についてもお話いたします。その他の取り組みについても簡単にご紹介します。
まず、ポータルアプリを軸にした、健康から医療までをサポートする世界の実現に関する具体的な内容についてお話しします。大事なことは上図中央にあるポータルアプリのオレンジゾーンです。個人がデジタルサービスに触れる入り口をしっかり作らなければいけないという思いから、ポータルアプリの構築こそ構想実現の一丁目一番地と捉えてきました。
実は上図左上のauウェルネスと右上の「ポケットヘルスケア」というアプリは、20年11月の同時期に立ち上げるという、少し変わった形でスタートを切りました。この理由については、後ほど簡単にご説明します。
この2つのアプリは、機能配置を若干ずらしています。auウェルネスはどちらかというと上図左側の健康予防が中心で、可視化やオンラインエクササイズ、ジム連携といった運動を中心としたサポートができるアプリとして提供を始めました。一方で青いゾーンで示したポケットヘルスケアは企業向け・自治体向けを主として、上図中央~右を意識した機能を中心に開発・提供していく形にしました。最終的にこの2アプリはauウェルネスに融合・統合していくことを目指して取り組みました。
auウェルネスについて簡単にご説明すると、名称にauとついてはいますが、他の携帯キャリアの方含め誰でも、基本機能を無料で使えるアプリです。日々の行動継続や運動、生活習慣の改善につなげていくことをメインとして、機能充実を図ってきています。1日の目標歩数を達成したらコインがたまり、それを使うと様々なプレゼントや健康増進に貢献していけるという、巷によくあるアプリからまずはスタートしました。
リワード(プレゼント)としてPontaポイントがもらえたり、ローソンでのプレゼントをはじめとした様々なキャンペーンを打ったりしています。会員数をこれからさらに大きく伸ばすことを目標としています。
一方でポケットヘルスケアは未病領域を意識した実証用のアプリとして、自治体などへの提供を目指してスタートしています。生活習慣病リスクの可視化や、Ubie(ユビー)さんの症状検索エンジンと連携して「頭が痛い」といった具体的な症状をアプリに打ち込むことで適正な受診行動につながるような、新しい機能を搭載しました。
自治体が中心とお伝えしているように、東京都の次世代ウェルネスソリューション構築事業で20~21年度の2か年にわたって、実証用アプリとして採択していただきました。20年度には豊島区で、21年度には板橋区、江戸川区を加えた計3区で合同実証を行いました。3区のときは合計で6000人超の方々にアプリを使っていただき、区民の健康増進や医療につながる最適化が可能か取り組みました。
健康から医療までトータルに網羅したアプリを作ろうとしても、すごく時間がかかることはご想像に難くないでしょう。上図のように、右の領域へ掘り進めるほど岩盤が固くなっていくイメージです。そこで我々は、上図中央下にあるようにポケットヘルスケアというアプリを別に作り、中央(未病)から掘って実証的に使ってもらい、成果を左から掘り進んできたauウェルネスとつなげられれば、全ての領域を迅速にカバーできると考えました。そのため、2アプリを同時に立ち上げ実証も絡めながら進めるという、少し珍しい取り組みをした次第です。
今はauウェルネスという1アプリに集約して、左の健康領域から右側のオンライン診療・オンライン服薬指導まで提供できるトータルなヘルスケアアプリへバージョンアップさせた状態に持っていくことができました。auウェルネスを軸として、健康から医療までサポートできる世界観を作りたいと思っています。
auウェルネスは統合によって健康管理からオンライン診療までカバーできるようになりましたが、アプリだけで提供できるサービスにも限界があると感じています。このアプリを軸に、健康・未病・医療それぞれの領域で様々なサービスを作り込んでいき、それをauウェルネスの上に配置していく取り組みをしています。
スマホdeドック
例えば未病領域に関連する検査について、2015年から「スマホdeドック(※外部サイト)」」という郵送型の血液検査サービスをKDDIのヘルスケア事業として進めています。お送りした検査キットで指先から採血し返送していただければ、上図左下にある血液検査の項目をWebから確認できるものです。東京都足立区の事例を上図右側に書いていますが、一般消費者に直接売るというより、自治体や保険者さん経由を念頭に置いています。下図にあるように、健診未受診の方の重症化予防対策や若年層の健康意識の動機付けなどの場面で活用し、自己検査のサービスとしてヘルスケア事業に上乗せした内容で昔から展開しています。
Apple Watchによる心房細動早期発見を目指した研究
ウェアラブルデバイスの話題でも少し触れましたが、デバイスを使って疾患の早期発見につなげることも、我々が創造を目指す価値としてわかりやすいと思っています。そのためApple社の「Apple Watch」による心房細動の早期発見(※外部サイト)をアプリがうまく補えるのではないかという研究も行っていました。Apple Watchは心電図測定ができますが、定期的な計測をなかなか習慣化できない、心房細動が検出されたとしてもうまく行動につながらないなど改善する要素があると考えています。
我々は2021年ごろにポケットヘルスケアとApple Watchを連携させ、定期的に心電図を測り、もし心房細動の兆候が示された場合はアプリに「心房細動の兆候が出ていますよ」というお知らせを通知し、医師への相談をご希望の方にはオンライン診療の申し込みを提案するようにしました。記録されたECG(心電図)のデータをPDF化して連携して、ドクターに相談/受診していただく流れにすれば、心房細動の早期発見や治療につながる人も増えるのではないかと考え実施していました。上図右側に21年度の結果を載せていますが、興味深かったのは412名の方が計測を続けてきたなかで、心房細動と検出された方が20名いた点です。母集団のコントロールがうまくできてないので比率についてあまり強調はしませんが、しっかり導線整備をするなかで、結果的に5名の方が受診まで至りました。結果から、アプリとの導線整備をうまく行えば早期治療につながる方も増えるのではないかと思いました。
あとは定期的な計測や追加計測について、アプリでうまくインセンティブをつけることができれば、より多くの方が心房細動の兆候を見つけられるのではないかと考えました。
そこで、22年度も研究を継続しました。具体的にはアラームやタイマーを使って「朝8時です。測りましょう」といった定常的な計測リマインドや、PHRに基づいた追加的な計測リマインドをしていくなかで、心電図測定を促して診療までつなげるという取り組みです。
4か月間実施したところ、参加者の方の6.53%のなかで兆候検出があり、そのうちの1/5にあたる1~2%が受診まで至ったという結果が出ました。やはり早期発見につながるソリューション開発もできるのではないかと思い、今取り組みを進めています。
PREVENT 生活習慣改善支援プログラムMystar
医療の領域にある重症化予防も研究段階ではありますが、PREVENT(※外部サイト)さんという健康支援サービスを展開する企業と提携して、KDDI総合研究所が絡んだPay For Successの実証に取り組んでいます。
ファストドクター社との新しいオンライン診療サービス開発
オンライン診療・オンライン服薬指導といった領域は、コロナ禍で緩和された部分もあります。ファストドクター(※外部サイト)さんというコロナ対応の往診でフィーチャーされた会社に、弊社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)から出資しています。
そしてメンタル領域のオンライン診療サービスをファストドクターさんが立ち上げ、auウェルネスからの連携もしています。まず、特定の疾患領域でのオンライン医療体験を整備して、利用者を増やすための取り組みを22年11月からスタートさせています。
PharmaX社と新しいオンライン薬局体験づくり
医薬品での治療や服薬指導の領域も当然あるので、オンラインの薬局体験づくりもしっかり行う必要があると思っていました。こちらについても、PharmaX(※外部サイト)さんというオンライン薬局を運営する会社にCVCから出資をして、auウェルネスと連携した日常的な相談から治療生活サポートまでできるような新しいオンライン薬局体験ができるサービスを、アプリを軸に作っていきたいと議論を重ねました。
最終的に2023年7月からKDDIはオンライン薬局「au薬局(※外部サイト)」を開業しています。処方薬・処方箋を取り扱っており、LINEを使った薬剤師さんとのチャット相談も無料でできます。新しい管理設定を作るサービスを自らの薬局事業で作り上げていくことに、KDDIは取り組んでいます。
データ(PHR)の利活用に向けた団体設立活動にも関与
こういったサービスやauウェルネスというアプリを様々に展開していくなかで、当然、データ・PHRが蓄積されていきます。集められたデータを利活用したい会社は多くあるので、業界サイドもしっかり団体を作って、標準化やガイドライン作成などのルール整備を目指す活動をしています。実は準備団体段階から、上図右下に載せた15社にKDDIは名を連ねていて、もっといえば主要3、4社にも入っており、しっかり準備してきました。2023年7月にこのPHRサービス事業協会自体が立ち上がり、120社超の規模感で業界のルール整備などが進んできています。こういった民間側の取り組みもどんどん進んでいると認識していただいた上で、ここに名を連ねているような会社とのコラボレーションも、ぜひいろいろ議論できればと思っています。
最後に、こういったデータ利活用のなかで特にコアのデータである電子カルテ由来のデータも、我々の事業として使えないか意識しています。23年4月には医療機関向けのDWH(データウェアハウス)「CLISTA!」 を提供する医用工学研究所(※外部サイト)(略称MEI)さんと資本業務提携を結んでいます。MEIは三重大学発のスタートアップで、電子カルテ以外にも医事会計をはじめ様々な部門・システムから取得したデータを元に、データの見える化、経営分析・業務改善につながるサービスを提供しています。将来的にMEIのサービスが入っている電子カルテ由来のデータとKDDIのデータを組み合わせた、様々なデータ事業も進めていけないか検討しています。
今後はDWHとして参入しつつ、病院内経営分析のために1.5次利用を行いながら、将来的にはRWD(リアルワールドデータ)を2次利用するサービスも提供していきたいと考えています。MEIの事業に関心のある方がいたら、協働ができればと思います。
その他に病院向けのスマホソリューション提供に向け、Dr.JOY(※外部サイト)さんと23年11月に提携し、勤怠管理とセットにしたモバイル販売にもKDDIとして取り組んでいます。また、三菱商事さん、ローソンさんとの3社資本業務提携を1ヶ月前に発表しましたが、そのなかでローソンというリアルな拠点を使ったコンビニでの薬の窓口や、オンラインで服薬指導を受けて医薬品を購入するといったことも、今後考えていきたいと言及していました。今後も我々はいろんな取り組みをして、ヘルスケアをどんどん広げていきたいと思っています。
総括(外部連携への期待)
最後に本講演の総括として、まずQCA鼎立が本質的な課題であり、需要を含めたDXが必要だと思っています。我々もauウェルネスというアプリを軸にしたヘルスケア事業開発を進めており、様々な自治体やスタートアップを含めた企業との連携を通じて、サービス開発を次々と広げてきました。そのため社内外の連携をさらに拡大させていく予定です。この講演を通じてもしご関心ある方がいれば、ご連絡いただければと思います。ご清聴ありがとうございました。
Q&A
Q.そもそもヘルスケアに関心がない層も含めて、最初にauウェルネスとの接点を持ってもらうためにどのような工夫をされていますか? auウェルネスへの入り口や最初に使ってもらうきっかけをどう作るかという観点と、実際にauウェルネスを使い始めたユーザーの方々のアクティブ率を上げて、「せっかく使ってもらったのに1回で終わってしまった」ではなく、継続させていく仕組み作りに関して、コメントいただけないでしょうか?
田口:まずauウェルネスの認知拡大と、ダウンロードして使い始めていただく接点を設ける施策は非常にシンプルで、auの会員基盤を有効活用しています。KDDIには、様々なオウンドメディア・オウンドサービスがあるので、そこと連携した形で「auウェルネスというサービスが始まりました。こういった使い方をすると、すごくお得ですよ」と広報して会員増を目指すというシンプルな取り組みです。あとはおもしろいものですと、高齢者向けのスマホとして売られている「BASIO(ベイシオ)」の端末には基本サービスとしてauウェルネスがプリインストールされており、歩数計などのauウェルネスを使った機能をアプリ一覧に表示することで、利用を促しています。こういった携帯キャリアならではの施策で会員獲得を増やす戦略を最近始めました。
入っていただいた上でどのように使い続けていただくかという点では、実はauウェルネスはアクティブ率が3割後半から4割弱と意外と高く、弊社のサービスのなかでもかなり上位といえます。歩数計の毎日行動した結果によって数値が変化していく部分や、「たまった歩数を今コインに変えないともったいないので使いましょう」と呼びかけてコインに変えてもらい、リワードとして補っていくといったシンプルな要素が意外に受けているようです。
Q.今のお話にもあったコインの原資はどこから来ているのでしょうか? 社会貢献の要素が強く、儲けはあまり重視されてないのですか?
田口:コインの原資は、基本弊社が出しています。auウェルネスの利活用におけるアクティブを高めていくための、ある種プロモーションコスト的な部分も込みで対応をしています。ただ、コイン自体はPontaポイントではなく価値がありませんので、プレゼントコーナーで、いろいろなものに変える必要があります。当然、au Payギフトカードのように我々の原資から出したリワードはありますが、そこにPR案件が数多く並ぶようになっています。例えば、健康食品を提供している会社さんにリワードの原資も出していただいています。このように我々だけでなく健康関連・ヘルスケアの事業を展開されている方々が原資を持った形でサービス提供していくことで、たくさんリワードが増えます。結果として、ユーザーの方も選択肢が増えて嬉しいという、3者がwinのような状態が作られ始めています。
Q. PHRは素晴らしいサービスだと思っており、ユーザーである一般の方や医療者にとって便利になりそうです。ただ、まずどうやってマネタイズするのか、そして国民皆保険のなかで人が動くインセンティブが低い状況でどのようにPHRを使っていただくかが課題だと思っています。このマネタイズと利用率の改善方法をぜひご教授いただきたいです。
城間:PHRは十何年も前からいろいろなサービスがあるなかで、マネタイズが難しいと長年言われ続けてきた領域だと思うのですが、その点について田口さんはどのようにお考えですか?
田口:マネタイズに関しては、やはり昔から言われている通り全然できない領域だと思います。特に日本では顕著です。そのなかでの工夫については、我々も当然考えながら進めています。多角的に、それぞれから少しずつお金をとっていき、結果として必要十分な規模にはできた、といったふうに進めていくしかないと思っています。
マネタイズポイントは、実は本当にたくさん散らばっています。例えばauウェルネスは基本無料のアプリですが有料課金も始めており、月額550円払っていただくと提携しているジムが1回分無料になったり、オンラインでいくつかプレミアム特典がついたりするというサービスを提供しています。ただ有料課金する人は少ないので、無償でauウェルネスというアプリを使っている方に対していろいろな商材をクロスセルするなかで、別途マネタイズを図るのが我々の取り組みです。
例えばスマホdeドックは約5000円するので我々の商品としては少し高単価ですが、これを買っていただくクロスセルもありますし、今回は説明を割愛しましたが我々は保険会社を持っており、auウェルネス会員を団体とみなした少しお安い団体保険も実は販売しています。健康に絡む商材として保険商品も会員向けに売っていけばいいという考えから、クロスセルもしています。さらに先ほどApple Watchの研究について話しましたが、Apple Watchと組み合わせて価値が高められるサービスにするのであれば、Apple Watchの販売自体も増えるかもしれないですし、販売数が増えればAppleさんとの交渉条件にも好影響が出るかもしれません。
さらに医療についても言及すると、40~50兆円のマーケットがしっかりと成立しているところに少しでも入り込んでいければ、利率は高くないものの一定の規模感は期待できるだろうという予測のもと、オンライン診療・オンライン薬局にも踏み込んでいます。アプリのPHRサービスだけではなくて、そこに健康から医療までも含めた様々なクロスセルの商材を展開していくなかで、なんとか必要十分な規模感のマネタイズを図っていこうとしています。
Q.高齢者の見守り、フレイル、認知機能などを検知するサービス開発や自治体健保組合等との連携を検討されていますか?
田口:高齢者の見守りやフレイルといった部分はちょうど医療の先にある領域で、その領域に向けたサービスや価値があるという考えから、この領域を排除はしていません。一方で、我々はauウェルネスという健康領域のアプリをToC(一般消費者向け)で展開していくところから始まってきていて、それを徐々に未病や医療の領域に展開してきている最中です。そのためさらに奥に存在しているような、アプリもなかなか普段使えなかったり、見守りを求めたりされる方に、我々の既存の事業基盤からどのようにアクセスできるかについては、まだ明確にストーリーが作れてないところです。そのため我々の部隊としては、まだそこまで考えていないというのが率直なご回答になってしまいます。
ただ1点補足すると、先ほども何度かご紹介したように法人向け部門(ビジネス部門)があり、そのなかには自治体向けにデジタルを使ったご提案をする部隊があります。そのなかで自治体から「こんなことができないか」と要望されるテーマのなかに、見守りやフレイルなどが含まれているのは知っています。ときには他社のサービスも合わせてその分野に対して何らかの提案をすることもあり、KDDIとして関わる機会が生じていると思います。
最後にもうひとつ言いますと、最近は「かんたん見守りプラグ(※外部サイト)」という、コンセントに挿しておけばWi-Fiが稼働して家のなかの生活の状態を簡単に家族がチェックできる商品も売っています。そういったものを組み合わせたご提案ができる、総合力ある会社だと思っています。
Q.自治体や健保との協業はどのように進められていますか? KDDIから声をかけるのか、声がかけられたところへ行くのか、どのように広げていますか?
田口:こちらから声をかけて、「こういう実証をしませんか?」と進める場合はあります。
今日ご紹介した東京都の豊島区、板橋区、江戸川区での実証に関しては、我々が少し珍しい2段階のアプリ開発をやりたいと思っていたときに、ちょうどいい実証事業があるので応募したいと考えて、我々から豊島区などに持ち掛けて一緒に応募し、実際に採択された事業でした。一方で、実証はひとつひとつその都度判断するものだと考えています。日本全国の多くの自治体や健保に対して「こういうサービスがあるので、協業しませんか? このソリューションを使いませんか?」と広くデリバリーしていくところは、我々の部隊が声をかけるというより、どちらかと言えばセールス的な要素も込みで法人営業部隊が声をかけているかと思います。基本的にはこちらからお声がけする場合が多くなるでしょうが、実証的な部分なのか、それともセールス的な意味も込みで営業部隊が対応するのかという違いはあります。
Q.今いろいろな企業の方々のソリューションと連携されていますが、そもそもどういう企業と連携するのかという判断軸は、どう考えていますか? さまざまな案件が持ち込まれてきたり、田口さんたちのほうでストラテジーを考えて自分からアプローチしたりと、いろいろなケースがあるかと思います。連携するときのソリューションのビジネスモデル(例えば、送客手数料をもらうなど)や事業開発という観点では、実際に他の協業の方々とどのように協議しているのでしょうか?
田口:判断軸も込みでお話するために先にビジネスモデルについてお話しすると、実はパターンは複数あると思っています。他社のソリューションをご提供する代わりに送客手数料をいただくモデルは考えうるものです。特に載せるサービスを広げれば広げるほど、全部自社でやることはありえないので、送客手数料やauウェルネスのプレゼントのようなPR・広告的な部分が出てくるのは事実でしょう。一方でサービスのUX(患者体験・利用体験)からすると、ただウェブサービスに飛ばされただけでは離脱しやすくなりますよね。また送客手数料をいただくと、効率はいいものの当然実入りが減って、規模感がなかなか上がらないケースもあり、au薬局がPharmaXさんだったときはまさにそうでした。自らがリスクを取って薬局事業を立ち上げ、その代わり調剤事業の売上自体を全部100%自分たちが取るという構図を作ったように、目指す規模感や整えたいUXを考えたうえで、複数のビジネスモデルを設計するケースは事実として存在しています。
その際にどの会社と組んで進めていくのかについては、他の判断軸があり、シンプルに自分たちが目指したい患者体験・ユーザー体験をお届けできそうな会社さんかどうかという点が基本かと考えます。どちらかというと、その上で業務提携・協業だけで成立させられるのか、資本業務提携までしなければいけないのかが1つの分かれ目かと思います。例えばファストドクターさんやPharmaXさん、PREVENTさんもCVCから出資していたように、使い分けをしています。